セイバーメトリクスでも測れない守備力、
データでは、分からないダッシュの速さ!守備編

 野球界に『革命を起こした』と言われるセイバーメトリクス。野球を統計学的に解析して、
選手の真の能力や、チームへの貢献度を数値指標で示す分析手法です。守備評価の指標が
「UZR」です。『UZR(Ultimate  Zone  Rating)アルティメット・ゾーン・レーティングの
略で、日本語で言うと、同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べて、
どれだけ失点を防いだかを表す、守備の評価指標です。その守備位置の平均的な野手が守る
守備者のUZRはゼロとなり、優秀な守備者は+10や+20といった数値になります。

セイバーメトリクスでも測れない守備力、

打球の処理により、奪ったアウトの実績を得点(防いだ失点)に換算して、守備における野手の
貢献度を評価するのがUZRの基本的な考え方です。ただし、守備位置の周辺にどれだけ打球が
飛んでくるかは、偶然に大きく左右されるために、単に奪ったアウトを数えるだけでは、適切な
守備の評価になりません。打者の評価で打席数を同じにして比較するように、守備についても
守備機会を同じにして比較する必要があります。

▲公平な比較を可能にしたUZR

そのためUZRの計算では、打球ごとにグラウンド上のどこのゾーンに飛んで、どのような打球
だったのかを記録する必要があります。その打球の内容(ゴロ、ライナー、フライ等の種類、
捕球位置までの到達時間など)。この内容に基づいて、打球の種類ごとに平均的にどれだけ
アウトの見込みがあるのかが計算されます。守備者はそのような『平均的な見込み』
との対比で評価されます。

 

この対比により、たまたま飛んできた打球が捕球しやすい打球多かった守備者が高く評価される
ことを防ぎ、公平な比較を可能にしています。打球処理の評価に加え、内野手の場合は併殺処理
の評価、外野手の場合は捕殺や刺殺、走者の進塁を抑止した評価などが組み入れられた評価が
最終的なUZRの数値になります。また出場イニングが多いいほど絶対値が大きくなるため、出場
イニング数が異なる選手同士を比較するには1000イニングあたりの数字に換算したUZR1000や
1200イニングあたりに数字に換算したUZR1200が必要になる。

▲あくまでも参考資料として活用!

しかし、このUZRも決定的な表価ではありません。あくまでも参考資料のとして、見る分には、
有益なデータです。UZRはデータで可視化され過ぎたことにより、守備の『本当のうまさ』の
本質から、離れている部分があります。例えば一塁手の内野手の送球するショートバウンドの
処理能力までは考慮されていない。また使用がマイナスの数値になっていてもユーティリティ
プレイヤーとしての利便性などは評価され難い部分、つまりデータで表現できないところです。

▲広島の菊池選手と巨人の坂本選手のUZRの高さ!

プロ野球の選手である、巨人の坂本勇人選手や広島の菊池涼介選手などは、これまで驚異的な
UZRの数値を出していましたが、年齢を重ねた事により、ピーク時に比べてれば脚力も落ち
守備範囲も狭くなり、UZRは下降しています。それは自然の摂理ですから仕方がありませんが、
それでも2人とも、2020年にはキャリア最小の失策数を記録しています。菊池選手が0個で、
坂本選手が4個。さらに菊池選手はシーズン守備率10割で失策数0回は、
2塁手として史上初の快挙です。

 

全盛期ほどの守備範囲はなく、多少狭まりましたが、熟練された守備力は今年35歳になって
も技術力や捕球技術、また打球に対してのグラブさばき、判断力は衰えを感じさせません。
このようにデータだけでは選手の能力を測れない部分が出てきます。例えば、内野手であれば、
ゴロを打たれた瞬間の第一歩目の反応の速さが大事ですが、守備では重要な瞬発力であり、
当然各選手によって異なりますが、現状では、データに反映されていません。

 

UZRは位1年などの単年では判断がしづらい使用とも言われています。またいろんな測定器が
開発さて、いますが、すべてが完全にデータ化されるわけではありません。見た目のスピード感
や各選手の動きの華麗さなどは、データ(数値)に表現できません。また人間の持つ感性や
勘などもデータにしにくいのです。これからも様々な道具が開発されるでしょう。が、
より確かな、簡単に分かりやすく、使いやすい分析方法になってほしいですね!

2022年10月10日